会社が突然倒産した

ある朝とつぜん「会社が倒産した」「今日で終わりだ」と告げられる――。給料は払われるのか、退職金はどうなるのか、明日からの生活費は、ローンは……と、頭が真っ白になっても当然の状況です。

けれども、日本には倒産で職と給与を失った人を守るための制度が複数用意されています。あわてて誤った行動を取らず、「証拠を確保する → 公的窓口に相談する → 失業給付と再就職につなぐ」という順番で動けば、未払い給与の回収から生活の立て直しまで道はつながります。

このページでは、対処を次の4つに分けて整理します。 「まず確認・確保すること」「絶対にやってはいけないこと」「相談・手続きの窓口」「日頃の備え

まず確認・確保すること

混乱していても、最初の数日でやるべきことははっきりしています。「自分の権利を証明できる材料」を失う前に確保するのが最優先です。

書類を確保する
  • 倒産の「形」を確認する … 裁判所を通した「破産・民事再生」なのか、夜逃げ同然の「事実上の倒産」なのかで動きが変わります。
    破産管財人や、会社の代理人弁護士の名前・連絡先を必ず控えます。
  • 労働債権を守る証拠を確保する … 次の書類はスマホで撮影し、コピーも取っておきます。
    • 雇用契約書・労働条件通知書、就業規則(特に退職金規程)
    • 直近数か月分の給与明細、タイムカード・勤務記録・シフト表
    • 雇用保険被保険者証、年金手帳・基礎年金番号がわかるもの
    • 源泉徴収票、未払い分の金額がわかるメモや通知
  • 離職票の発行を依頼する … 失業給付の申請に必須です。会社(または管財人)に「離職票をください」と早めに伝えます。倒産の場合は会社都合扱いとなり、給付が手厚く・早く受けられます。
  • 健康保険を切り替える … 退職日の翌日から会社の保険証は使えません。「国民健康保険」「任意継続(原則20日以内に手続き)」「家族の扶養に入る」のいずれかへ、すぐ切り替えます。
  • 貸与品と私物を区別する … 制服・PC・社員証など会社からの貸与品は返却対象。会社財産には勝手に手をつけないこと。

絶対にやってはいけないこと

倒産直後は判断力が落ちます。「あとから取り返しがつかない行動」だけは避けることが、状況の悪化を防ぎます。

やってはいけないこと
  • 高金利の借入・リボ・カードローンに飛びつく … 一時しのぎのつもりが、長期の負債地獄の入口になります。
  • 「給与を即日立て替える」と持ちかける業者に契約する … 給与ファクタリングを装った違法な高金利貸付(実質ヤミ金)の被害が多発しています。
  • 会社の備品・在庫・データを勝手に持ち出す/消す … 横領・背任・器物損壊に問われるおそれがあります。腹立たしくても手を出さないこと。
  • 未払い給与・退職金をあきらめて放置する … 請求には時効や手続き期限があります。「もらえないもの」と思い込まず、後述の窓口へ。
  • 再就職活動を止めてしまう … 失業給付は「働く意思と求職活動」が前提です。落ち込んでも、求職登録だけは早めに。
  • 感情的にSNSで内部情報・個人を晒す … 名誉毀損や守秘義務違反となり、あなた自身が加害者になりかねません。

相談・手続きの窓口

倒産は「ひとりで抱える問題」ではありません。未払い給与の一部を国が立て替える制度もあります。次の公的窓口を遠慮なく頼ってください。

専門の窓口に相談する
窓口相談・手続きできること
ハローワーク(公共職業安定所)失業給付(基本手当)の申請、求職登録、職業訓練の紹介
労働基準監督署未払賃金・解雇予告手当などの相談、会社への是正指導
未払賃金立替払制度(労働者健康安全機構)倒産で給与・退職金が払われない場合に、未払い分の一部を国が立替払い
総合労働相談コーナー(各都道府県労働局)解雇・賃金などの労働トラブル全般の無料相談
法テラス(日本司法支援センター)無料法律相談・弁護士費用の立替(収入要件あり)/0570-078374
市区町村・社会福祉協議会生活費が尽きそうなときの緊急小口資金・生活福祉資金の貸付、生活相談
  • 未払賃金立替払制度は、退職日の6か月前から立替払い請求日の前日までの「定期賃金・退職金」の未払い分(上限あり・年齢で変動)を国が立て替える仕組みです。請求には期限(倒産の状況により原則2年)があるため、早めに手続きを。
  • 生活が本当に苦しいときは、家賃を支える「住居確保給付金」や、各自治体の生活困窮者自立支援窓口も利用できます。
  • 気持ちが追い詰められたら、ひとりで抱えないでください。 「いのちの電話」「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」など、無料で話を聞いてもらえる窓口があります。

日頃の備え

倒産は前ぶれなく見えても、平時の備えで衝撃を大きく和らげられます。

  • 生活防衛資金を確保する … 生活費の3〜6か月分を、すぐ引き出せる預貯金で持っておくと、収入が途絶えても冷静に動けます。
  • 重要書類をデータでも保管する … 雇用契約書・給与明細・源泉徴収票・退職金規程などを、写真やPDFでクラウドにも残しておきます。
  • 雇用保険・社会保険の加入を確認する … 失業給付は雇用保険の加入が前提です。給与明細で天引きを時々チェック。
  • 「いつでも動ける」状態を保つ … 職務経歴書を年1回は更新し、社外の人脈・市場で通用するスキルを育てておきます。
  • 危険な兆候に気づく … 給与の遅延、社会保険料の未納、取引先の縮小、急な経費カットなどは経営悪化のサイン。早めに情報を集め、選択肢を準備します。

本ページは一般的な情報をまとめたものです。制度の金額・期限・要件は変わることがあり、個別の事情によって対応も異なります。具体的な手続きは、ハローワーク・労働基準監督署・法テラスなどの公的窓口で必ずご確認ください。